白井市内で発見された小刀「逆刃刀」について

小刀逆刃刀展示風景

小刀「逆刃刀」は白井市郷土資料館で展示しています。  

発見された小刀「逆刃刀」について

小刀逆刃刀(白鞘入)小刀逆刃刀(研済)

ここまでが研ぎを行なったものです。これ以降は研ぐ前の状態の写真になります。小刀逆刃刀小刀小刀

 通常の刀の峰にあたる部分が刃に、刃にあたる部分が峰となった小刀です。逆刃刀として仮称しました。反りは浅いです。全長:約28.2センチメートル(9.3寸)、刃渡り:約22.6センチメートル(7.45寸)。無銘。鞘も通常の日本刀のものとは異なります。

 この資料は白井市内の旧家で発見された刀剣類4口の内の1口です。この旧家は江戸時代後期に牧士に任じられ苗字帯刀(みょうじたいとう)が許されていました。旧家に伝わる牧士の資料は千葉県指定文化財「 小金牧の牧士資料 」や白井市指定文化財「 牧士川上家資料 」に指定されています。今回の4口の刀剣類は指定から漏れている文化財が無いかを確認するため、白井市教育委員会で調査した際に発見されたものです。

所有者に確認したところ、これまで所有者自身その存在を知らなかったとの回答がありました。刀剣登録がされていないことから警察署に届出し千葉県教育委員会での刀剣登録の審査を受けましたが、その結果、日本刀の製法にのっとっていないことから刀剣登録がかなわず、他の登録できなかった3口の刀剣類とあわせて市に寄贈を受けたものです。

 4口の刀剣はいずれも「牧士に関連する資料」と考えておりますが、小刀「逆刃刀」については明治期の資料ではないかとの指摘がされています。用途・製作目的についてもはっきりしませんが、現状では実用のものではなく鑑賞を目的としたものではないかと推測しています。いろいろな検討課題が残りますが、「牧士川上家資料」は牧士を務めた川上家に伝わる近世から近代の資料群を一括して指定していることから、本資料も白井市指定文化財「牧士川上家資料」総計14,816点のうちの1点として指定されています。

(写真)鞘に収めた状態

鞘に収めた状態

(写真)表

 下側に峰、上側に刃があります。

(写真)下側

下側  刃が無く平坦になっています

(写真)裏

 下側に刃、上側に峰があります

(写真)上側

上側  峰ではなく、刃があります。

(写真)先端

先端  裏表両面から刃が付けられています。

(写真)柄を外した状態

柄を外した状態 茎(なかご)が短く、日本刀の製法とは異なっています。

(写真)茎の比較

茎の比較  上が通常の日本刀、下が小刀(逆刃刀)です。

Q & A

Q:これは「花刀」では?

A:   花刀は鉈造(なたづくり)だと聞いています。いくつかの形態があるようですが、刃は片面に付けられ、裏面は平滑になる点は共通するようです。鉈にしろ鎌にしろ一般的な民具の刃物は片面に刃が付けられ、多くの日本刀は両面から刃が付くものと考えています(下図) 日常的に使うものなら、片面を砥げばよいナタのような断面の方が有効かと思います。
(イラスト)183
 今回発見の逆刃刀は両面から刃が付けられており、日本刀の形状にならったものになっています。鍔やハバキが付けられたのも、一般的な日本刀と共通する断面形だからと考えています。
 発見された刀剣は届出の際に警察署で発見届証に刀剣の種別を記します。今回発見された他の3口はなぎなた・脇差・短刀とされました。小刀はこれまでに無い形態のため警察署内で何度も協議した上で「逆刃刀」として記され、「逆刃刀」として刀剣登録の審査を受けています。刀剣審査会では審査委員より「(所有者が)特に造らせたものであろうが日本刀の造りではない」との判定を受けています。

Q:逆刃刀のような刀剣が発見された場合、個人で所有できますか?

A:   「鉄砲刀剣類所持等取締法」により発見された刀剣類は警察署にすみやかに届けなくてはなりません。届出されますと警察署から都道府県教育委員会に連絡が行き、刀剣審査会(千葉県では年4回)を受けて美術品として認められますと登録証が発行されます。
ただし、仕込刀など日本刀とは異なる特殊な形の刀は登録が難しいようです。逆刃刀は警察署に届けた段階で登録不可として当初は廃棄するように指導を受けました。ただ今回は登録の可能性が少しでもあるなら審査を受けさせてほしいこと、また、逆刃刀は牧士関係資料として指定文化財候補であり、登録できなければ刀剣登録の審査会場で市が寄贈を受けることとして交渉した結果受理されました。指定文化財候補として特別にご配慮いただきました千葉県警、千葉県教育委員会、刀剣審査会の審査委員の方々に深く感謝申し上げます。
 刀剣登録できなかった刀剣類は個人では基本的に所持できませんが鉄砲刀剣類所持等取締法第3条第2項により「地方公共団体」が「研究のため」「又は公衆の観覧に供するため」なら所持が可能です。市で寄贈を受けたのはそのためです。

もしかしたら日本のどこかの旧家にはもっと逆刃刀らしい逆刃刀があるかもしれません。 その際はぜひ地元の教育委員会とご相談いただければと思います。

Q:今回の発見の意義は?

A:   おそらく今回発見されたような刀剣類は現時点では他には無いものではないかと考えています。過去に発見されていたとしても刀剣登録できず個人では所持できないことから廃棄されてしまった可能性が高いからです。前例の無い資料であり位置づけが難しく情報も少ないことから、公表することで様々な情報が集まれば幸いです。何か情報がありましたら白井市教育委員会文化課までお寄せ下さい。

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